「不思議の国のアリス」(キャロル)

世界の児童文学の輝かしい幕開け

「不思議の国のアリス」
(キャロル/矢川澄子訳)新潮文庫

ある日、少女アリスは
人の言葉を喋りながら歩く
白ウサギと出くわす。
アリスは白ウサギを追いかけて、
ウサギ穴に落下する。
辿り着いた広間にあった
不思議な小瓶の中の液体を
飲んだアリスは、
みるみる小さくなっていく…。

4年前の2015年に
本作品誕生150年を迎えた本書
(1865年出版)。
タイトルは誰でも知っていると
思いますが、読んだことのない人が
多いのではないでしょうか。
特に男は。
読まなくても説明できてしまうのです。
「ああ、あれだろ、
アリスっていう女の子が
穴ん中に落ちて…、
ウサギとかトランプとか出てきて…、
体が大きくなったり
小さくなったりして…、
不思議な体験して…、
気が付いたら夢だったっていう…。」

再読しましたが、
やっぱりハチャメチャな世界です。
で、今回は何回体が伸び縮みしたか、
付箋を貼ってチェックしてみました。
縮んだところにピンク、
伸びたところにグリーンの付箋です。
さて、何枚貼ったでしょう。
正解はピンク7枚、グリーン5枚です。
貼ったあとに気が付きました。
アリスの体の変化は
単純な伸び縮みでないのです。

1回目の伸びの場面。
「こんどは世界一大きい
 望遠鏡みたいに
 体がのびてゆくじゃないの。
 さようなら、あんよちゃん!」

つまりこのときは
上下方向に伸びたのです。しかも
「これじゃ、
 だれがあんたたちに靴や靴下
 はかせてあげるんでしょう。」

一様にのびていないのです。
察するに腰下から足首までが
どんどん伸びていったのでしょう。

3回目の伸びの場面。
「下をむいても目にうつるのは、
 おそろしく長いくびばかり。」

ここでは首だけが伸びたのです。
それ以外の2、4、5回目は
縦横高さとも均等に拡大しています。

そうか、この作品は
イメージすることが大切なのか。
いろいろな動物(というよりも
変な生き物)や不思議な出来事を、
活字から脳内ビジョンへ
いかに変換していくか。
それが本書を読む醍醐味なのです。

調べてみると、
本書出版当時のイギリスでは、
児童書といえば教訓を含んだ
堅苦しいものが多く、
信仰や教養を高めるための
ものだったそうです。
それを打破し、子どもたちに
読書の真の面白さを提供した、
世界初めての児童文学なのです。
世界の児童文学の
輝かしい幕開けだったのです。

中学校1年生に
ぜひ読んでほしい1冊です。
感受性が豊かなうちに
読むべき作品です。
イマジネーションが枯れてからでは
本書の真価は味わいにくくなるのかも
知れません。

(2019.7.28)

Enrique MeseguerによるPixabayからの画像

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